Blenheim Point

主に英国(リーズ大学)と米国(イリノイ大学)の留学について記載しています。

【勉強6】LectureとSeminarほか

そういえば書いてなかったなと思ったので授業システムに関する話題を。

1.授業形式

リーズLLMの多くのModuleはLecture(レクチャー)とSeminar(ゼミ)からなります。レクチャーは日本の大学の一般的な講義スタイルと同じで、階段状になった講義室で学生が一方的に授業を受けます。ゼミはそれより小さな教室で行われ、人数は最大でも30人。ただゼミの進め方は教授によりけりで、ほぼレクチャーと同じように淡々と進行させる先生もいれば、学生にプレゼンを行わせたり、授業中にディスカッションの時間を設けるまさにゼミっぽい感じで進める先生もいます。ただ多くの先生は原則レクチャーと同じような説明をしつつ、たまに教室全体に問いを投げかけ、その答えに反応しながらゼミを進める、というスタイルをとる先生が多いと思います。

そんなわけで、リーズ大学LLMではゼミであっても教員・学生、あるいは学生同士の議論が講義の軸になるようないわゆるソクラテスメソッドタイプのスタイルはマイナー(というか私の知る限りゼロ)です。びしびし当てられることもないですし、たいていクラスに2人ぐらいはハーマイオニー的な有難い存在がいるため、私は安心して気配を消して地蔵化しています。

レクチャーとゼミの割合はゼミのほうが圧倒的に多いです。ゼミしかないモジュールが大半を占め、レクチャーとゼミ混合のモジュールでも3対7ぐらいでゼミの方に多くの時間が割り当てられています。前期に履修したCyber Law(講義6コマにゼミ2コマ)、後期で履修しているCorporate Finance Law(8コマ全部講義)は例外的な存在です。

2.平常点

まず出席点はありません。まあ日本のロースクールもそんなものはなかったですし、修士にもなって出席するだけで点が入るのもどうかと思うので良いと思いますが、出席自体は毎回チェックされます。これは成績評価を目的としたものではなく、学生ビザの関係で大学に義務づけられた措置のようです(要は就学を隠れ蓑にした不法就労対策。日本でも去年ニュースになってましたね。)。私は経験がありませんが、連絡なしで欠席したり、連絡しても欠席回数が多いと学生課に呼び出されるようです。

そして授業へのParticipation(参加貢献度)も基本的には評価対象外です。なのでゼミでも成績のために学生が競って手を挙げる必要もなく、また予習不足による減点もないです。自律的なリソースの振り分けができる(頑張りたいモジュールは頑張って、そうじゃないモジュールは手を抜くというスタイルが通用する)という点は、日米のロースクールと比べても学生側の大きなメリットかなと思います。

じゃあ何で評価するのかというとほとんどのモジュールがエッセイ4000ワード1本勝負、一部のモジュールが全体の10%-20%程度をプレゼンテーションに割いているぐらいです。英国の大学の成績評価は客観性と公平性をすごく重視しているため、主観的判断かつブラックボックスになりがちな平常点評価は意識的に排除されているのかもしれません。予習しなくてもエッセイは書ける(というより予習段階のMandatory Readingの分量じゃエッセイを書き上げるのに必要な量の10%にも満たず、どうせほぼゼロベースで向き合う必要が出てくる)ので、各回の授業へのコミットと最終的な成績評価は形式的にも実質的にも無関係といって差し支えないように思います。

3.予習課題

米国のロースクールに行くとみんな予習課題に追われてケースブックをしこたま読んでいる印象を受けるのですが、僕はこちらにきてからそういう経験はせずに済んでいます。上記のとおりそもそも予習しなくても当該講義における自分の学習効率が下がる以外のデメリットがない、というのもあるのですが、それを割り引いても予習量が適切にコントロールされている印象を受けます。

「この判例全部呼んでこい(ドーン」というのは稀で、「この判例はアウトラインだけ」「判示のうち、ここからここのパラグラフだけ」「この論文の●ページまで」というように細かくカットしてくれる先生が多いように思います。あと講義で使うパワポが事前に公開されるので、それを先に見ておいて「あー大体ここらへんの話を扱うのね」と指定されている範囲からさらに絞りをかけて予習ができるのも大きいです。

これだけ書くと他国のロースクールに比べてぬるいように見えますし、実際そういう面も否めないです。ただ、そもそもイギリスのLLMは日米のロースクールのように法曹養成システムを構成していないので、よりアカデミック寄りであり、実務法曹の基礎を叩きこむというコンセプトが放棄されている点に大きな違いがあります。他方で学位の認定要件として漏れなく卒論(Dissertation)の執筆が要求されており、「強制しないけど、ちゃんと自律的に勉強してね」という色合いが強いです。実際私も興味が薄い(けど単位の関係で履修はしないといけない)科目の予習は全くしないこともありますが、自分の関心領域である会社法や金融規制法については、各授業で指定される量の倍以上の文献を読むことも珍しくないです(じゃないと卒論書けないので)。

個人的には(LLMに限らず)大学って本来そういうところだよね、という思いがあるので、イギリス式のアカデミック寄りなLLMは性に合っていましたし、イギリス留学を選んで良かったと思うことの1つでもあります。