Blenheim Point

主に英国(リーズ大学)と米国(イリノイ大学)の留学について記載しています。

【映画】レンブラントは誰の手に

前から梅田のスカイタワーにあるシネ・リーブル梅田が気になっていたので参戦。前回は大阪ステーションシネマで観た「世界で一番しあわせな食堂」で、人生初つまらなすぎて途中で席を立つという経験をしたので、今回は「とりあえず最後まで見られればOK」という(失礼な)レベルの期待値をもって「レンブラントは誰の手に」を観ました。

 

rembrandt-movie.com

www.youtube.com

 

結果としては大当たりで、珍しく上映終了後パンフレットも買ってしまいました。レンブラントの絵をめぐって3つの異なるストーリーが進行。1つはヤン・シックスがレンブラントの新作として発見した「若い紳士の肖像」をめぐる物語(これが本物かどうかで揉める)。2つめはロスチャイルド家相続税対策のために売りに出した「マールテン・ソールマンとオープイェ・コピットの肖像」を誰が買い取るかという話(ルーブル美術館アムステルダム国立美術館が揉める)。そして3つめがスコットランドの貴族が自分の持つ「読書をする貴婦人」を部屋のどこに飾ろうかひたすら悩む話(誰とも揉めない)。

話の尺的にも3つめはサイドストーリー的な位置づけで、他の2つの話が本物か/贋作か、どこの国が持つべきか、いくらで買うべきかといったギラついた欲望がチラつくのに対し、3つ目は自分が好きな絵とどうやったら自然な形で向き合えるかをひたすら追及しており対照的。派手な対立も争いもないのにひたすら好みの絵の楽しみ方を追求する貴族の姿はインパクト大。原題のMy Rembrandtとマッチしたエピソードでした。

ちなみに「マールテン・ソールマンとオープイェ・コピットの肖像」はルーブルアムステルダムの共同所蔵になったですが、これは法律上どういう整理になっているんだろうと気になってしまった。2枚1組の絵なのでそれぞれに所有権を持って相互にレンタルするというやり方もあったように思うけど、劇中での言及のされ方や調べてみたところ、あくまで2枚の絵に対して互いに所有権を主張できる状態、らしい。そもそも共同所蔵ってなんだろう(10年ごとにホームの美術館を変えるとか…?)

唯一残念だったのは邦題。原題は「My Rembrandt」で、同じレンブラント愛好家でも哲学や感性、価値観は千差万別、というのを3つのストーリーで表現した作品にふさわしいタイトルになっています。一方で邦題の「レンブラントは誰の手に」というタイトルだと、↑の2つ目の話(ルーブルアムステルダムの争奪戦)にフォーカスされたタイトルになってしまっていて、原題と大きく趣旨が変わってしまっているような気がするし、明らかに原題の方がいいよね、とも思います。「私のレンブラント」だとキャッチ―ではない、というのは理解できるんですが。

とはいえ中身が文句なしに面白かったので大満足です。

 

※劇中に出てきたエリック・ド・ロスチャイルド男爵が自分の卒論の指導教授に激似でびびりました。

【勉強13】前期科目の感想

前期の科目の思い出など

Corporate Law

  • 名前のとおりイギリスの会社法を学びましょうという科目。
  • 2019-2020はColin Mackie先生が担当。本人はScotland訛りだと言っているが、それを気にしてゆっくり喋ってくれるのでとても分かりやすい。
  • LLMでちゃんと正面からCorporate Lawを取り扱う大学はあまり多くないので貴重(Corporate GovernanceとかCorporate Financeみたいなビジネス寄りの発展科目のみだったり)。
  • リーズだと私法系のコースをとってる学生は基本的に履修するよう勧められるので(一部のコースでは必修科目)、履修学生が多い。
  • 科目の性質上、ビジネスよりアカデミック寄りなので、そういうのが好きな人には向いてると思う。日本法との異同が比較しやすく、個人的には履修した中で1番勉強してて楽しい科目だった。
  • Hannign(イギリスで1番権威のある基本書)が推奨されましたが、私は大学時代のゼミの教授に勧められたGowerのほうが好きでした。英国の会社法の基本書といえばHanniganかGowerが二大巨頭らしいです。やや実務よりだとMayson、French&Ryanが定番だとか。
  • 日本と同じくもっとコンパクトで分かりやすい本(リークエみたいなの)は多数あるのでとっかかりとしてはそっちのほうがいいかも。ただEssayを書くときには使いづらいので(記述が浅いし、authorityとして弱い)、HanniganかGowerはどっちかあった方が良さげです。
  • イギリスもコモンロー法域ですが、会社法に関してはちゃんと整備されている(Companies Act 2006)し、アメリカみたいに州によって会社法が違うということもないので、割と条文ベースの勉強方法になると思います。なので、条文集(Blackstone's StatuteのCompany Law)があると便利かもしれません(Insolvency Lawも掲載されているのでそっちの科目もとる場合は使いまわせる)

International Human Rights Law

  • Internationalという名がついているけど、実際はほとんど欧州人権裁判所(ECHR)の事案を扱う。あとは国連の人権救済システムをぼちぼち。
  • そもそもちゃんと法的な拘束力を持った判決出せる地域裁判所は世界でも限られており、ECHR並に加盟国に影響力を持っている機関が存在しない。なので担当教員が変わっても実質ECHRを学ぶ科目になりそうです。
  • 履修学生の8割はHuman Rights LawコースやCriminal & Justiceコースの学生。LLM全体では私法系(ビジネス系)の学生が圧倒的に多いので、他のクラスでは見かけない人たちに出会えます。
  • 他では半分以上を占める中国人学生の比率がこの科目だけ1割ぐらいに。
  • 2019-2020の担当教員は若手のStuart Wallace先生。とても親切かつ熱心な線背いでした。
  • でも採点は厳しい。。。
  • あと上記のとおり履修生の多くは公法系のクラスの出身であり、彼らは他に人権科目(European Human Rights Lawとか)も履修しているので、前提の知識量に差がある。なのでちゃんと予習していかないと議論にもついていけない。
  • 当然のことながらビジネスには1ミリも役に立たない科目なので、純粋に興味がないときついかも。
  • 個人的には被害者を救出するために誘拐犯を拷問することの適法性が問われた事案(ドイツ)や、伝統的に体罰が容認されてきた地域社会において体罰の禁止を求めることの是非(イギリス・マン島)とか、犯罪(人身売買)に対して十分な捜査をしなかったことに対する国家の責任(ロシアだっけ?)とか、興味深いトピックが多かったのでとってよかったです。

Cyber Law

  • 前期最大の高難易度科目
  • 担当教員はその世界では結構有名らしく、母国のインドだと政府の色んな委員もやっている模様
  • 法律やCaseを学ぶというよりも、サイバースペース論的なお話が続く
  • 具体的には2000に出版されたRessigの"Code"という本がベース
  • エッセイ課題も講義の内容も全体的に抽象的な話が多くて難易度高めでした
  • たまたま日本人LLM生は3名全員この講義をとっていたので「まずこのエッセイ課題は何を言っているのか」という所から相談した思い出。。
  • 自分の周囲だと点数も結構辛めでした。
  • ただ逆にこういう機会がなければ考えることのないテーマもたくさん提供して頂けたので(上記のRessigの「人の行動を規制する原理は法、規範、市場、アーキテクチャ」という分類論etc)、振り返ってみればとって良かった…と言えるか悩む
  • 単位落とした人は(少なくても周りには)いなかったです

 

英国LLMにかかった費用

ツイッターで留学にかかる費用が話題になっていたので計算してみました。

 

0. 前提

・為替は1£=140円で計算。

・留学中はBrexitで揉めたりコロナが流行ったりで130円~145円あたりをうろちょろしていました。

・ポンドはドルに比べて変動幅が激しいのでレートでだいぶ変わるはず。

 

1. 学費(266万)

・一番のコスト要因

・自分の入学当時は19,000£(266万円)

・2020-2021から値上げして今は20,500£ぐらい

・英国LLMは大体同じくらい。QMULで24,950£、KCLで28,870£(2020-2021)

・プレセッショナルは受講していないので追加費用なし

・日本の感覚だと国立なのに高くない?と思ってしまうものの、米国のロースクールが軒並み6万~7万ドル弱なの見るとお値打ちに見えてくる

 

2. 寮費 (60万)

・正確な額は忘れたけど入寮当初計算したら日本円で60~70万円くらいだった気がする。大体月7万円弱ぐらい。

・布団や料理道具は買う必要があるけど家具や家電は備え付きなので初期コストはほぼなし

・リーズ大学の場合は寮は単身者のみ。

・寮費で比べるとKCL、QMULと比べても少し安いかなあ程度だった記憶(進学先決めるときに計算した)。ロンドンの家賃はえげつないと聞くので、自分で借りると大きく変わるかも

 

3. 生活費(84万)

・パンだけとかラーメンだけとかならともかく、普通の食事を食べようとすると日本より割高。

・学食いっても別にさして美味しくない食事に6~8£は余裕でかかる。

・普通に街で外食すると1回最低15£は覚悟。サイゼリアとか吉野家のありがたさに気づく

・食費をどれだけ切り詰めるかで大きく変わりそう。自分は月に450£ぐらい(15£×30日)は使っていたはず

・といっても光熱費は寮費込みなので普段かかる費用は飲食費と雑費と携帯代ぐらい。

・携帯代はプリペイドで月10£ぐらい。神。

・トータルで月500£(7万円)ぐらいだったはず。コロナで途中撤退したものの、予定どおり8月まで1年間いたとしたら年額で84万円。

 

4. 本代(20万)

・大学の教科書と文献がメイン。

・各科目4000wordsのエッセイ評価+引用合戦みたいな所があるのでそれなりに読み込むことは必要。

・勉強しにきてるのに書籍に妥協するのは嫌だったので、基本書と図書館に入ってなくて読みたい本は買っていた。1科目120£ぐらいは使っていたと思う(40£×3冊計算)。8科目+卒論で大体1500£(21万円)ぐらい?

・とはいえ基本書は図書館にそろっているし、電子ジャーナルも発達してるので勉強や評価を割り切っちゃえばほぼゼロでもいけそう

・中国人留学生のコミュニティは前年度の先輩から貰い受けるマーケットが存在しているらしい

 

5. 留学準備費用(ざっくり70万円)

・往復渡航費と荷物の輸送費でトータル30万円くらい。

・IELTSを10回ぐらい受けたのでそっちでも30万ぐらい消えた

・Tier4-VISAの発行手数料や保険料その他で10万ぐらいだったような…

 

6.まとめ

  • 上記の1~5を合計すると500万円いかないぐらいでした。概算の数字ですが、出国前と帰国後の預貯金の額と照らし合わせても違和感のない数字なので大きくは外れていないと思います。
  • ちなみにイギリスの学費はアメリカよりはずっと安いけど、ヨーロッパ基準だとそうでもなく、ドイツやオランダのLLM(英語)だと50~100€ぐらいでいけたりします。
  • 総じてイギリス(特にリーズ)のLLMはお得感があってよいです。

 

【2023年2月18日追記】

 

この記事を執筆してから約3年が経過し、急激な円安(1£=160円)と物価高、そして英国LL.M.の学費も毎年上昇しているので、現在では500万円は超えてしまうと思われます。

ただ基本的に円安・物価高・学費上昇は米国LLMでも同条件なので、米国に比べると相対的にコストを抑えられる点は変わらないはずです。

【生活11】入寮手続

忘れないうちに大学生活中に苦労したことを備忘的にまとめておきます(といってももう1年以上前のことですが…)まずもって入寮手続が一筋縄ではいきませんでした。

 

1. Blenheim Point(学生寮)の受付時間

  • Blenheim Point(というか他の学生寮も)は平日の午前8時~10時、午後16時~18時までしか受付があいていません。なんと1日のたった1/6です。これ以外の時間は正面玄関は開かず、裏の通用門(キーが必要)から入るしかないです。荷物も受け取ってくれません。
  • 入寮手続の書類には「上記の時間以外には24時間Subwardenが交代で対応する」と書いてありますが、Subwardenは学生兼寮生(専業ではない)ので、ぶっちゃけアテになりません(Subwardenごとに個性がありますが、全体的に適当)。記載された携帯には誰も出ないものと思ったほうが吉。
  • よって手続書類を鵜呑みにして夜中に到着するのはとてもリスキーです(実体験)。できれば日中の上記の時間帯に到着するような日程を組むのがベター。

2. 日本からのルート

  • 日本から行く場合、大体次の3つのルートがメインです。
  1.  ヒースロー→(電車)→キングスクロス駅→(同)→リーズ駅
  2. ヒースロー→(飛行機)→リーズ空港→(バス/タクシー)→寮
  3. マンチェスター空港→(電車)→リーズ駅
  • 日本からの直行便はヒースロー着しかないので、そうすると1か2。逆にトランジットを辞さないのであればマンチェスター空港とリーズ駅は直通かつ時間もヒースロー空港~リーズ駅の半分ぐらいで済むので3も有力です。
  • 1は電車メインなのでスケジュールの融通がきくのと分かりやすさがありますが時間がかかります。
  • 2はヒースローからリーズ空港への便がうまくはまる必要があるのと、リーズ空港から寮まで行くのにUberを召喚しなきゃいけないのがハードル高いです(それが無理ならリーズ駅直行のバスを待つ)。
  • 私は行きも帰りも1でしたが(帰りはリーズ空港が閉鎖されていたので否が応でも①)、2を使っている学生もそこそこいました。
  • リーズ駅から寮までは徒歩で15分くらいですし道も分かりやすいです。
  • ちなみにSimロックを外したスマフォを持っていき、空港に到着したら即プリペイドSimを購入するのが定石ですが、リーズ空港では売っていないのでヒースローで入手しておく必要があります。

3. 寮についたらすること

  • 入寮してもあるのはベッドと椅子と机だけなので色々買ってくる必要があります(そういう意味でも夜に到着すると店が開いていないので厄介)。
  • トイレットペーパーとかそういう日用品は徒歩5分のTesco Expressで買えます。クロスワードパズルとかも売ってます。ただし夜間はTescoが空いていないので到着タイミングをミスるとペーパーなしで一夜を過ごすことになります(過ごした)
  • 布団やら調理器具やらはCity CenterのMorrison(徒歩10分くらい)まで行く必要があります。とはいえ入学シーズンにはこれでもかというぐらい新生活系用品を売っているので、Morrisonにさえ行けばなんでも手に入ります。安かろう悪かろうですが。
  • 大学が事前に「生活セット」的なものを売りつけてこようとしますが、割高なので無視しましょう。Morrisonに行けば(略
  • めちゃめちゃ固いマットレスに絶望して最初の晩を迎えると思いますが、仕様です。

 

【勉強12】卒業しました

前回の更新からだいぶ日があいてしまいました。仕事に復帰するとやはりそれなりに忙しく、卒論を提出したあとは頭から抜けてしまっていたというのが正直なところです。

イギリスのほうも2回目のNational Lock Downに突入し、大学も今年のカリキュラムを回すのに必死な状況だったはずですが、それでも11月中には「中旬には卒論の審査結果を発表するよ」とアナウンスがあり、つい先週公表されました。

内容的に落第はないなと思っていたのですが、やはりいざCertificateの画面が表示されたときは安心しました。

また幸運なことにDistinctionでの卒業+Head of School Dissertation Priseなる賞(卒論の最高得点者がもらえるみたいです)のおまけもついてきました。英語が本当にできなくてちょうど去年の今ごろはとてもとても辛い思いをしていたのですが、頑張りが報われたようで嬉しかったです。

もちろん自分だけの頑張りではなくて、寮やLLMの仲間、指導教授との出会いに恵まれたところが大きいです(月並みですが、本当にそう思っています)

特にLLMにおられた日本人学生の方には本当に助けて頂きました。

LeedsのLLMはマイナーなので例年日本人学生は0のようなのですが(Tutorの教授が言っていました)、なぜか2019-2020は私以外に2人の日本人学生の方がおられました。

Semester1の授業で思い切って話しかけてみたら仲良くして頂いて、学内外でも楽しい想い出を作らせてもらいました。偶然3人とも履修していたCyber Lawという科目が、担当教員のインド訛りの英語+内容の難しさでなかなかヘビーだったのですが、お互い慰めつつ(?)なんとか乗り切ったのも想い出深いです。

コロナで想定外の終わり方をしてしまった留学生活でしたが、当時はまだ珍しかったPCR検査の経験やロックダウンの経験も含めて、なかなか貴重な経験ができたと思います。留学にいって本当に良かったです。

Leedsも本当に良いところだったので、宣伝(?)もかねてまた別途まとめられたらと思っています。

 

 

 

【勉強11】春学期採点発表

コロナで例年よりも少し遅れていたようですが、後期の採点結果が発表され、無事に全部単位をとることができました。

 

評価も前期に比べるとだいぶ良かったのですが、自分の手ごたえをベースにすると、どうにもかなり甘めに採点してもらったような気がしています。とはいえ図書館の閉鎖により本も借りられず、学生によっては本国での隔離期間が発生するなど例年から比べるとかなり悪条件下でのエッセイ提出だったことは事実ですので、そのあたりの配慮かもしれません(あとこの状況下でResitを出すことは極力避けたかったという大人の事情も…)

 

それと今年はコロナに関する特別措置としてsafety net制度なるものが導入されることが決まっています。具体的には秋学期の成績の平均点が70点(Distinction)を超えていれば、春学期以降の成績を問わず学位がDistinctionになるようです。幸い秋学期単独でもぎりぎり平均70はとれているので、卒論の結果次第では私もsafety netの恩恵に与れるかもしれません(特に海外キャリアは志向していないのでgradeは自己満足以外の何物でもないのですが…)

 

まだ卒論の提出が終わっていないのですが、こうして前期・後期無事に全ての単位を取り終わったことを考えると、いよいよ留学も最終コーナーだなあと感慨深いです。本当は夏のヨーロッパを楽しみながら悠々自適(?)に卒論を書いているはずだったのですが、こればっかりは仕方ないですね。

 

来月1日から職場にも復帰するので卒論もできれば今月中には仕上げてしまいたいところです。頑張ります。

【勉強10】イギリスの大学のランキング(2022年版更新)

最近QSの大学ランキング2020年版が発表されたのですが、リーズはぎりぎりTop100に入ったようで、大学から「やったぜ」的なメールが届いてました。全学に送っちゃう?とも思いましたが、留学生に向けた営業戦略としては大事ですし、日本の偏差値のような定量的な指標がない以上、アピールせざるを得ないのかもしれません。

 

ランキングについてはその有用性も含めて色々な議論があるところですが、私に関しては弁護士業界全般でリーズのLLMの前例が乏しいこともあり、それなりにちゃんとしたところですよということを示せないと内部的にNGが出る可能性も無きにしもあらずだったため、もっぱら社内的な事情で切実な問題でした(結果論としては特に何もつっこまれることなく行かせて頂けたので杞憂でしたが)。

 

某商社さんの社員の方から伺ったところによると、法務部では社費留学にあたってかなりそのあたりのスクリーニングが厳しいらしく、Oxbridge+ロンドン大学系以外基本NGだとか。英国LLM留学の前例が少なすぎてそもそもあまり理解されてないという背景事情もあるようですが、ロンドン大学系ならどこでもよくて、(たとえば)エディンバラダラムブリストルあたりはNGというのはなかなか…と思わなくもありません。というわけでちょっと下世話な感じもしますが、イギリスの大学事情についてつらつら書いてみました。

 

1.ラッセルグループ

イギリスの大学は99%国立大学なのですが、その中でも有力な24大学がラッセルグループと呼称されています。私の経験としても定評ある法学系ジャーナルに出てくる論文は圧倒的にラッセル在籍の研究者のものが多いので、とりあえずこの24大学のどこかであれば「英国内でも名の通ったちゃんとした大学」といっていいのではないかと思います。勿論、ラッセルに入っていなくても有力な大学は多々あります(St.Andrewは典型例です。)。

 

2.大学ランキング

世界の大学ランキングは色々あるようですが、よく目にするところだとSimmons社が発表しているランキング(通称QS)が1番有名かなと思います。

 QS(https://www.topuniversities.com/university-rankings/world-university-rankings/2020)は以下。

 1. Oxford 2. Cambridge 3. UCL 4. Imperical Colledge London 5. Edinburgh 6. Manchester 7. KCL 8. LSE 9. Bristol 10. Warwick 11. Glasgow 12. Durham 13. Sheffield 14. Birmmingham 15. Leeds 16. Nottingham 17. Southampton 18. St. Andrews 19. Quuen Mary 20. Lancaster 

 

ただ他の世界ランキングでは順位が変動します。同じく有名なThe Times Higher Educationが発表しているランキング(通称The)だとリーズは22位(https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2020/world-ranking#!/page/0/length/25/sort_by/rank/sort_order/asc/cols/stats)、ARWUでは9位から16位のレンジでランクインです(http://www.shanghairanking.com/arwu2019.html

 

続いて国内の媒体が発行しているランキング。Guardian、TimesとCompleteが3強らしいです。例えばGuardianだと

1. Cambridge  2. Oxford 3. St.Andrew 4. Loughborough  5. Durham 6. Bath 7. ICL 8. Warwick 9. Lancaster 10. Leeds 11. UCL 12. York 13. Coventry 14. Excter 15. LSE

となっています。

英語版Wikiに記載されているRussel Groupの各種ランキングの早見表(2019年版)はこちら。

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こうして並べてみると、世界ランキングと国内ランキングではかなり順位が変わるのが分かります。世界ランキングだとOxbridgeが先頭を独走、ICL・UCL・LSE・KCLというロンドン大学群と古豪Edinburghがそれに追随するイメージでしょうか。イングランドスコットランドの大都市圏が強いです。

対照的に国内ランキングではOxbridgeが断トツなのは変わらないもののRussel以外も多くランクインしています(最たる例ではSt.Andrewsが各種ランキングで3位~4位にランクイン)。一方でロンドン大学群やEdinburghが苦戦しており特にQMULは大きく順位を下げています。

Oxbridgeは別格として、世界・国内の両方で安定してTier1に食い込んでいるのはICL、Durham、Warwick、Exeterぐらいでしょうか。リーズも世界/国内ともに10位~15位のレンジ、良くも悪くもTier2安定しているといえそうです。

なんでこんなに世界/国内でランキングが変わるのかはよく分かりませんが、日本の場合もQSのランキングと国内人気(偏差値やら倍率やら)には結構乖離があるので同じような事情かもしれません。

 

3.Magic Circle

上記はいずれも法学部ではなく大学全体の評価ですが、法学部を測る1つの面白い指標としてChambersが発表している英国の大手法律事務所(いわゆるMagic Circleに属する事務所)の新卒採用シェアのランキングというものがあります(https://www.chambersstudent.co.uk/where-to-start/newsletter/law-firms-preferred-universities-2019

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昔(2012年~2013年)はリーズは6位にランクインしていたようですが、徐々に後退して2019年は14位。こちらでも相変わらずOxbridgeが首位を独走していますが、Durham・Bristol・Excester・Nottinghamが安定して上位に食い込んでおり、やはり世界大学ランキングとは違った様相を呈しているのは面白いですね。特にDurhamの強さは圧巻です。QMUL以外のロンドン大学群(UCL・LSE・KCL)は大体毎年リーズと同じぐらいといったところでしょうか。

どちらかといえば大まかな傾向は国内ランキングと似ているといえそうですが、Bristolがここ10年ずっとTop Tierに食い込んでいるのは興味深いです。

ただし英国の法曹養成制度は日本や米国的な意味でのロースクールとは全く結びついておらず、LLMも無関係です。したがってMagic Circleの採用における各大学のプレゼンスは、(我々の留学先となる)LLMの評価とは切り離して考える必要があります。

 

4.まとめ 

日本人が行くLLMはロンドン大学系が圧倒的に多く、これらの大学が国内外から素晴らしい評価を得ていることは疑いようがないのですが、同じくらい(あるいはそれ以上に)勉強・研究をする環境が整っている大学は沢山あります。それにも関わらず、英国LLMというと基本的にロンドン一択になっているのは、前例(他の都市の大学の卒業者)がほぼいないというのが理由の1つじゃないかと推測していますが、仮にそうなら勿体ない気がします。

ロンドンは素晴らしい街で私も大好きですが、家賃や治安といった住みやすさ、大学の設備や評判を含む学習環境においてはロンドン以外の大学・都市も十分に留学先の候補になりうるだけの良さがあると思います。

リーズに限らず、各都市に特色のある素敵な大学がたくさんあるので、今後は英国留学される方の1つの選択肢になれば嬉しいです。

 

※2022年12月12日更新

アクセス数が多かったので最新のQSランキングを見てみたら、半年前(2021年6月9日)に更新されていました。

www.topuniversities.com

2022年の英国の大学の順位は、

1. Oxford 2. Cambridge 3. ICL 4. UCL 5. Edinburgh 6. Manchester 7. KCL 8. LSE 9. Warwick 10. Bristol 11. Galsgow 12. Southampton 13. Durham 14. Birmingham 15. St.Andrews 16. Leeds 17. Sheffield 18. Nottingham 19. QMUL 20. Lancaster

でした。

1~2ランクの変動はありますが、2020年とほとんど変わらないようです。

 

国内(Guardian)のランキングも見てみました。

 

www.theguardian.com

1. Oxfrod 2. Cambridge 3. St Andrews 4. LSE 5. Durham 6. Warwick 7. ICL 8. Bath 9. UCL 10. Loughborough 11. Galsgow 12. Edinburgh 13. Lancaster 14. Bristol 15. Exeter 16. Leeds 17. Southampton 18. Strathclyde 19. York 20. Aaberdeen

2020年と同様、QSとは大きく異なるようです。