Blenheim Point

主に英国(リーズ大学)と米国(イリノイ大学)の留学について記載しています。

ロースクール図書館

イリノイ大学ロースクール棟の1階には専用の図書館が併設されており、誰でも入室可能です。リーズ大学のときは法学部独自の図書はなく、中央の大きな総合図書館(Edward Boyle Library)に法学を含め全ての図書が集中していましたが、イリノイ大学の場合は(物理的な)規模の大きさゆえか、キャンパス内に専門性に応じた大小の様々な図書館が点在します。一応総合図書館的なものもあるにはあるのですが、そちらには法律系の図書はほとんど置かれていないようで、法律文献のリサーチはロースクール棟の図書館が中核になります。

内部は明るくてスタイリッシュな設計となっており、1階に閲覧エリアが、地下1階~2階の3フロアにわたって開架式の図書が並べられています。閲覧エリアの席の埋まり具合は3割~5割といったところで、日本のロースクールの自習室のような鬼気迫る雰囲気はなく、のんびりしています(試験前になるとまた変わるのかも?)

2階の一角にブースエリアがあり、その1席をこんな感じで指定席として客員研究員のために確保して頂けます。紙が貼ってある部分はロッカーになっており(下からパカンと開けられます)、渡米後最初の事務室訪問時に鍵と一緒に貸与されます。講義で使う重いケースブックや法文集はこのロッカーに置きっぱなしにすることが可能です。

このブースエリアは基本的に客員研究員か博士課程の学生しか使用していないようで、いつ行っても閑散(?)としています*1。 他の客員研究員の方の座席もあるのですが、まだどなたにもお会いしたことはありません。

 

書庫のエリアはかなり広く、1枚目の写真で見える範囲に比べると、実際はかなりの奥行きがあります。これが3フロア分あるので、蔵書数はかなりのものです。もっとも、その多くを占めるのが判例集で、書籍の充実度は普通というのが現時点での率直な印象です。

これはイリノイ大学だからというより、米国の法文化や出版文化に起因する全体的な傾向で(たぶん)、リサーチといえば判例(case law)の調査であり、またアカデミアにおける業績の公表は各ロースクールから出ている紀要(ローレビュー)が中心的な役割を果たしていることが大きいのではと考えています。いわゆる体系書を筆頭に、日本・英国と比べると法律図書の出版自体が国家規模の割にはあまり多くない印象です。

対照的に、英国の場合は大学紀要がそこまで強くないものの*2、体系書を含む法律書籍の出版文化は盛んで、Sweet & Maxwellのような大手の学術出版社や、大学出版社の二大巨頭(OUPとCUP)を中心として、毎月のように多くの法律書籍が上梓されています。

イギリスもコモンローの国なのでアメリカと同じような感じになりそうなものですが、イギリスは判例法を中心としつつもそれを体系的にまとめようとする作業が脈々と行われてきている(ような気がする)のに対し、米国ではあまりそのような傾向はあまり感じられず、その違いにも面白さを感じています。*3

また英米に共通する点として、日本法でいうところのコンメンタールに相当するものが本当に少ない(ほとんどない)です。そもそも「コンメンタール」という言葉自体、ドイツ語のKommentar(注釈書)に由来するもので、このあたりは成文法をベースにした大陸法との違いが如実に表れてくる点と言えるかもしれません。

日本や英国での学習に慣れてきた立場からすると、体系書がほとんどない中で外国法の全容をしっかり掴むのはなかなか大変ですが、なんせこんなおしゃれな図書館ですので、蔵書も含めてしっかりこのリソースを有効活用できるレベルまで到達できればと思います。がんばります。

*1:かくいう私も実はあまり使っておらず、(1)自習だけなら家で出来る、(2)文献調査の多くはオンラインで完結する、(3)図書館で調査するときも1階の一般閲覧室で事足りる(2階に上がってくる元気がない)等々の理由で足が遠のいており、ほぼ授業前の休憩場所兼物置と化しています。

*2:法学分野だとOxford、CambridgeのLaw Journalはそこそこ存在感はあるものの、ジャーナルとしては大学紀要よりModern Law Review、European Law Journalのような専門誌の割合が圧倒的に多いです。

*3:米国は州法・州裁判所による違いがあることに加え、判例の数が膨大であり、これを体系的にまとめようとするのがそもそも難しい気もします。