Blenheim Point

主に英国(リーズ大学)と米国(イリノイ大学)の留学について記載しています。

シャンペーン・アーバナのお買い物マップ

昨日の薄切り肉の件を書いてて思ったのですが、シャンペーン周辺のお買い物事情(主にスーパー)をまとめておけば、これから生活を立ち上げる方の時間の節約になるかなあと思い、ぱぱっとマップを作ってみました。果たして需要はあるのかという思いもありますが、未来のシャンペーン留学生の方のお役に立てば嬉しいです。

 

www.google.com

赤いピンがアジア食材店、青いピンが普通のスーパーです。グレーのピンのうち、北にあるのが大学の中心部(Illinoi Union)、南にあるのがロースクール棟になります(ロースクールの僻地っぷりが可視化されてつらいですね)。

以下、雑感です。個人的には1番のFIMと4番のCounty Marketで必要十分です。

1 Fresh International Market(FIM)

昨日書いた、シャンペーン・アーナバ地域でもっとも品揃えの良い(たぶん)アジア食材店です。日本の基本的な生活調味料は大体手に入ると思います。野菜や果物の売られ方も、日本と同じように個別にパッケージされて売られています(量り売りではない)。

2  AM-KO Oriental Foods

FIMの規模を小さくした(1/4ぐらい?)アジア食材店です。お米やインスタント麺のような生鮮食品ではないものの品揃えはFIMと比べても遜色ないと思います。あとFIMにはなかった日本酒も売ってました。ただそれ以外の品揃えはFIMに軍配が上がります。キャンパスタウンから近いのはAMKO、ダウンタウンから近いのはFIMですが、AM・FIM間も1ブロック程度の距離しかありません。

3 Far East Grocery

店名こそFar Eastとなっていますが、日本食材・韓国食材もそれなりに多いFIMやAMKOに比べ、こちらは中国系食材・商品によりフォーカスしています。店員さんも中国の方、お客さんも中国の方、使われる言語も中国語、といったように中国ローカルのお店という感じです。香辛料をはじめ日本では見慣れない食材もあり、その点でFIMやAMKOと差別化しているのだろうなと感じます。FIM・AMKOに比べ店内は狭くて雑然としており、日本人であればあえてここに来る必要性は高くない気がしました。

(日本の百均を彷彿とさせる狭さ)

4 County Market

シャンペーン・アーバナ地域では一番バランスのとれたスーパーかと思います。食料品(生鮮品・加工品・菓子類・調味料etc)や生活用品(バス用品・薬・掃除器具)を幅広くそろえており、店内も広いです。値段も高くなく、またキャンパスタウンからのアクセスも良いので、私は一番ここをよく使います。学生客も多いですが、学生じゃない近隣住民の方も多く来店されており、まさに地域のスーパーといった感じです。

5 Target

キャンパスタウンのド真ん中(というよりキャンパス内)にあるスーパーです。端的にいえばここは学生向けのスーパーという感じで、County Marketより生活用品が充実しており、布団や部屋着、収納箱、延長コードといった室内用品も揃っています。最低限の荷物だけもってシャンペーンにきた学生も、ここに駆け込めば新生活をスタートできるようなイメージです。Amazonをはじめ他のECサイトで買うより、Targetで買うほうが安く上がる場合が多いので、初期はここに足を運んで一通り必要なものを揃えるのが良いかと思います。

生活用品とは対照的に食料品の品揃えは悪く、特に生鮮食品は絶望的です(申し訳程度に果物がちょっと置いてあるくらい)。利用客は学生さんがほとんどを占め、お昼時や夕方はレジ待ちの長蛇の列ができています。TargetからCounty Marketは歩いて5分もかからないので、シャンペーンに到着してすぐの立ち上げ期以外は、あまりわざわざこちらに来る機会もないかと思います。

6 Schnucks

1~5はいずれもシャンペーンエリアのスーパーですが、こちらはアーバナエリアのスーパーになります。品揃えのラインナップや売り場面積はCounty Marketとあまり変わりませんが、こちらの方が若干ながら高級路線&ちょっと珍しいものも売っているような気がします。

キャンパス東の住宅地エリアに住んでいる場合、バスを使わないといけないCounty Marketに比べ、こちらは歩いてくることができるという利点があります(Lincoln Squareの西側からだと20分、東側からだと10分ぐらい)。逆にキャンパスタウンやキャンパス西からだと直通のバス路線がなく、いったんLincoln Squareで降りてそこから10分ほど歩く必要があるので、County MarketではなくわざわざSchnucksに来る人はいななさそうです。

7 Lincoln Square(Common Ground)

同じくアーバナエリアにある大きなショッピングモールもどきです。「もどき」なのは、いまは営業しているテナントがかなり少なく、ショッピングモールとしてまともに機能している状態ではないためです。日中にいっても閑古鳥が鳴いており、日本における地方の衰退したアーケード街を彷彿させます。

地元の方に伺ったところによれば、10年以上前はSchnucksや(郊外の)Walmartがまだなく、アーバナの買い物の中心地はここだったのだとか。確かに、建物自体はとても大きく、駐車場も広大で、かつての栄華(?)を感じさせます。数少ないまともに生き残っているテナントの1つがCommon Groundというスーパーで、売り場面積は小さいながらも自然派・高級路線な感じの食材やお酒が揃っています。日本でいうとまさに成城石井みたいな雰囲気ですね。

品揃えの点でSchnucksとは明確に差別化されており、客層も店員の方の接客態度も雲泥の差があります。とはいえやはり品揃えの偏りは顕著で、僕もたまにワインを買いに行ったりしていますが、逆に言えばワインを買うぐらいしか用途がないです。

(番外編)WalmartCostco

地図には載せていませんが、シャンペーンとアーバナの郊外にそれぞれ大型スーパーがあります(シャンペーンはWalmartCostco、アーバナはWalmart)。売り場面積はとにかく広く、↑のスーパーにはない家電や自転車なども売っており、日本のホームセンターのようなイメージです。

ただバスで行くにはとても面倒で本数も少なく、基本的には自家用車で行くことが前提になります。日用品であれば上記のスーパーで十分事足りてしまうので、単身者だとあまり行く実用性がないかもしれません(私も行ったのは自転車を買おうか迷ってたときくらいです。車はないのでUber呼んでいきました。)。とはいえ本場のWalmartの広大さはなかなか壮観で、半ば観光的な意味で「米国の郊外型スーパー」を見に行くのは面白いと思います。

(お店の前の道路はこんな感じ。周りになーんにもありません)

(衣料品売り場も充実)

(自転車。価格帯は1万ドル~)




meat to meet

前回の更新から2カ月ぐらい日があいてしまいました。冬期休暇に入ってから日本に一時帰国しており特にシャンペーンネタで書くことがなかったというのが正直なところですが、無事に戻って留学生活を再開させております。震えながら。

でも嬉しいこともありました。

外国の生活は楽しかったり辛かったりいろいろですが、やっぱり食生活の点はままならないことの方が多く、中でもナンバーワンなのは普通のスーパーで薄切り肉が売ってないことです。リーズもそうだったのですが、基本的に売られてるのは厚めのお肉かひき肉系で、日本でいうところの豚こまや薄切り肉的なものがありません。

駐在生活が長いご家庭だと、肉をスライスして薄くする専用のスライサー(?)的なものを導入して解決していると聞いたことがありますが、まあいっても滞在は1年足らずですし、スライスの手間かけてまで薄切り肉食べたいかというのもあって、前期はひたすらブタ挽肉をガパオライスにしてご飯にかけて食べるという生活を送っていました。

後期もガパオ地獄かあとおもってしょんぼりしていたんですが、先日足を延ばした中華食材店でついに発見。

 

冷凍薄切り肉です。実はこの子の存在は知ってまして、リーズで生活していたときは中華食材店には基本的にこれが売っててよくお世話になってました。1枚1枚ロールになって分かれてパック詰めされており、日本だと全く見かけない形態(?)の売られ方ですが、保存・保管がしやすいですし、鍋に放り込むだけですぐにシャブシャブができるのでとても優秀です。

シャンペーンにきたときも当然にこれが手に入るものだと思ったのですが見当たらない。大学近くのAMKOやFar East Groceryとか、大学近くの目ぼしいアジア食材店は大体行ったのですが全く見つからず、「シャンペーンには薄切り肉は存在しない」と諦観してガパオ生活に突入していたわけです。

ところが先日なんとなくシャンペーンを徘徊したくなって、バスに乗って普段は全くいかない大学の西側の方にお出かけしてみたところ、Fresh International Marketというアジア食材店を発見し、そこで感動の再会(?)を果たせたという次第でした。

freshimarket.com

薄切り肉の他にもいろいろと食べなれたものが売っています。全般的に品揃えはAMKOや他のアジア食材店を凌駕しており、ここにくれば他のお店に行く必要もなさそうな印象です。もっと早く気づけばよかったです(やっぱり外に出るといろいろな発見がありますね。新しいダンジョンに入ったら隈なく探索しておかないと後で泣きを見るということを幼少期からバイオハザードシリーズで叩きこまれていたはずなのですが。)

あと実は薄切り肉問題にはもう1つ解決策がありまして、Weeeというアジア食材専用のECアプリで頼むことでも手に入ります。これも前期のときは知らず、年末に帰国した際に、同じくNYU留学から一時帰国中の先輩と梅田のグランフロントでご飯を食べているときに「アメリカでも薄切り肉が食べたい。つらい。」と愚痴ったところ教えてもらいました。

Weeeはこの物価高の割にはかなりコスト面を頑張ってるという印象で、35ドル以上頼めば配送料がタダということにも釣られ、お肉以外にも納豆なり鮭フレークなり冷凍うどんなりを大量に注文するヘビーユーザーに。さすがに↑のFresh International Marketよりは値段張りますが、そもそもこの時期のシャンペーンは外に出ることすら苦痛なので、お買い物に行く必要がないというのはかなりのメリットかと思います。

この2つで私の食生活はだいぶ改善することが確定したので、前期よりはいくらか快適なシャンペーン生活を送れそうです。めでたし。

冬きたる。

 

寒いです。

 

引継ぎはじめ各種情報でも「シャンペーンは寒い。」「冬はやばい。」等々の情報を目にして怯えていましたが、いよいよ身をもって実感する季節がやってまいりました。

「まだ11月半ばなんですが…?」という心の声をよそに昨日は雪もシンシンと積もり、連日夜から朝にかけて氷点下は当たり前。今週の金は最高気温でもマイナス2度、土曜日は最低気温がマイナス11度と、米国中西部の本領を発揮してきています。つい先月まで私の部屋の床下の隙間から屋内に侵入を試みていた野ネズミの皆様も最近はぱったりご無沙汰になりました(元気かな)。

冬のヨークシャーも結構寒かったですがこれほどではなく、体感としてはアイスランドレイキャビクにいたときの感覚のほうが近いです。

本格的な寒波が到来するらしい1月以降に生きていける自信がないのですが、歴代の客員研究員の皆様も凍死することなく無事に生還しているのできっと何とかなるはず。

米国中間選挙

今週11月8日は米国の中間選挙の投票日でした。最終的な結果はまだ出ていませんが、Red Wave(共和党圧勝)の下馬評を覆して民主党が善戦し、上院では今も拮抗している状態です。

平日ということもあってイリノイ大学は休校、授業は全てキャンセルされました。「さすが米国、選挙に対する意識が高い…!」と感動したのですが、実はこれはイレギュラーな対応で、今回が初めてとのことです。

イリノイ州の中でもイリノイ大学やその周辺地域は民主党支持層であるところ、大学の学生の投票率が上がれば基本的には民主党有利になることを見越して、red waveに危機感を持った大学が休校を決めた…なんて話も耳にしましたが、実際のところはわかりません。

そんな中間選挙ですが、上院の現時点での選挙結果(勝利政党の地域性)を面白く感じました。

(出典:googleのデータ←「中間選挙」で検索すると冒頭に表示されるやつ)

米国は何かと西海岸(リベラル)v東海岸(保守)で対比されがちですが、政治的にはむしろ両海岸v中西部+南部で分断されていることがよくわかります。

目を引くのがコロラド州(CO)とイリノイ州(IL)で、内陸部にありながら飛び石的にBlue Stateになっています。特にイリノイ州はまわりが全て真っ赤に囲まれながら、唯一の民主党が勝利しています。

大まかな傾向として大都市圏は民主党支持に傾きやすいという話もあるので、ニューヨーク、ロザンゼルスに次ぐ大都市圏であるシカゴを擁するが故の結果でしょうか。ただコロラドデンバーがあるとはいえそこまで大きな経済圏が発達しているわけではないので、経済規模以外の要因もあるのかもしれません。

以前、何かの本で米国社会は肥満率で可視化されるという話を読んだことがあったのでふと気になって調べたところ、少し古いデータですが2011年のものが見つかりました。

 

skinnychef.com

調べてみて自分でもびっくりしたのですが、今回の選挙結果の分布とぴたりと一致しています。両海岸v中西部+南部という構図もさることながら、コロラドイリノイが飛び地的に周辺の州と異なる傾向を示すところまで同じです。

もちろん、民主党支持者になると急にジム通いをはじめるとか、ケーキをたくさん食べると共和党を応援したくなる、なんてことはないと思うので、おそらく別の原因があるのでしょう。

治安との関連性も調べてみましたが、こちらはあまり傾向の類似性はありませんでした。

www.santarosa-lawyer.com



ならば経済指標はどうだと州内の1人あたり名目GDPとも対比してみましたが、こちらも「うーん」という感じです。

en.wikipedia.org

 

 

犯罪率・1人あたりGDPともになんとなーく「両海岸v中西部・南部」という構図の枠内には収まる気しますが、コロラドイリノイをはじめ、上院選挙結果とは違う傾向を見せている州もちらほらあり、肥満率ほどの近似性はない気がします。

そもそも違う年のデータを比べているのでその時点からガバガバな分析ですが、米国は政治をはじめ、あらゆる側面で地域性が強い(州ごとに全く異なる)というなんとなく体感で思っていたことがこうして可視化されると、背後にある因子が何なのかは気になるところです。

シャンペーンの治安と犯罪地図(Crime Map)

イリノイ大学では、キャンパスの周辺で起きた犯罪については大学から全学宛に一斉送信されるのですが、9月以降に受信したものだけでも、

①9月5日午前9時58分 路上で自転車に乗った男性に突然殴打され、スマホを奪われる。

②9月18日午前2時25分 路上で突然、前から歩いてきた複数人のグループに殴る蹴るの暴行を受けて病院送り。

③10月1日午前2時45分 学生寮にてデートアプリで知り合った男性から性的暴行を受ける。

④10月8日午後2時50分 路上で突然男性に殴られた挙句、金を払わないとさらに危害を加える旨を脅迫され、有り金を持っていかれる。

 

と犯罪の見本市状態です。発生頻度もなかなかですが、①と④は日中の大学キャンパス周辺(というか目の前)の路上で通り魔的に起きており、こうなってしまうともはや「夜に出歩かない」とか「危険な通りに近寄らない」といった標準的な自衛策では対応できず、こうなってしまうと事件に遭うかどうかは半ば運次第です。

シャンペーンは治安が良いことが売り文句になっており、これは一つの真実ではあるのですが、あくまで「米国基準で」「相対的には」という留保がつき、やはり日本と比べてしまうと危険度は高いんだなあというのが最近の印象です。これでも銃撃事件がないだけ、ご近所のシカゴやセントルイスよりは圧倒的にマシというのがまたなんともいえないところ。

 

例えばシカゴでは無差別銃撃事件に限っただけでも、2022年7月5日にで7名の死者が、11月1日は13名の負傷者が出ています。

 

www.cnn.co.jp

www.cnn.co.jp

 

ちなみに、イリノイ大学のWebページでは、キャンパス周辺で過去60日間に報告された犯罪件数をマッピングしたデータ(Crime Map)が確認できます。

police.illinois.edu

2022年11月11日に確認したところでは、この60日間に大学周辺で700件以上の犯罪が確認されているようです。未成年飲酒や飲酒運転、万引き等も含まれている数字なので体感治安とはギャップがありますが、暴行や引ったくり、性犯罪もそれなりのシェアを持っているので街の危険なエリア・安全なエリアをざっくり掴むには有用な資料かと思います。フィルターを使えば発生時間帯でソートもできるので、どの時間にどのエリアが犯罪発生頻度が高いかも確認することができます。

 

このデータを見る限りでは、キャンパス西側が圧倒的に悪く、キャンパス北部とアーバナのダウンタウン周辺あたりもそれなりに犯罪頻発地域と言えそうです。ただシカゴとは異なり、「この通りは足を踏み入れるだけでもやばい」的な危険エリアはなく、繁華街や商業施設が多い地域は犯罪も起こりやすいということかと思います。

いま自分が住んでいるのはキャンパス東側の赤枠で囲ってある部分ですが、このエリアは完全に一軒家中心の住宅地なせいもあってか、(少なくてもここしばらくは)全く犯罪が認知されていないようです。実体験としてもこのエリアで何か身の危険を感じたことはありません。

黄色枠のエリアは日本でいうところのマンションやアパートが多くたっています。キャンパスや繁華街に近いので、学生さんに人気なのはこっちのエリアのようです。便利ではあるのですが、繁華街やお店に近いこともあって結構うるさいのと、治安にも若干注意が必要になってきます。このあたりは利便性とトレードオフなところがあるので、何を優先するかで選択が変わってくる感じでしょうか。

無事に帰れるといいなあ。。

ロースクール図書館

イリノイ大学ロースクール棟の1階には専用の図書館が併設されており、誰でも入室可能です。リーズ大学のときは法学部独自の図書はなく、中央の大きな総合図書館(Edward Boyle Library)に法学を含め全ての図書が集中していましたが、イリノイ大学の場合は(物理的な)規模の大きさゆえか、キャンパス内に専門性に応じた大小の様々な図書館が点在します。一応総合図書館的なものもあるにはあるのですが、そちらには法律系の図書はほとんど置かれていないようで、法律文献のリサーチはロースクール棟の図書館が中核になります。

内部は明るくてスタイリッシュな設計となっており、1階に閲覧エリアが、地下1階~2階の3フロアにわたって開架式の図書が並べられています。閲覧エリアの席の埋まり具合は3割~5割といったところで、日本のロースクールの自習室のような鬼気迫る雰囲気はなく、のんびりしています(試験前になるとまた変わるのかも?)

2階の一角にブースエリアがあり、その1席をこんな感じで指定席として客員研究員のために確保して頂けます。紙が貼ってある部分はロッカーになっており(下からパカンと開けられます)、渡米後最初の事務室訪問時に鍵と一緒に貸与されます。講義で使う重いケースブックや法文集はこのロッカーに置きっぱなしにすることが可能です。

このブースエリアは基本的に客員研究員か博士課程の学生しか使用していないようで、いつ行っても閑散(?)としています*1。 他の客員研究員の方の座席もあるのですが、まだどなたにもお会いしたことはありません。

 

書庫のエリアはかなり広く、1枚目の写真で見える範囲に比べると、実際はかなりの奥行きがあります。これが3フロア分あるので、蔵書数はかなりのものです。もっとも、その多くを占めるのが判例集で、書籍の充実度は普通というのが現時点での率直な印象です。

これはイリノイ大学だからというより、米国の法文化や出版文化に起因する全体的な傾向で(たぶん)、リサーチといえば判例(case law)の調査であり、またアカデミアにおける業績の公表は各ロースクールから出ている紀要(ローレビュー)が中心的な役割を果たしていることが大きいのではと考えています。いわゆる体系書を筆頭に、日本・英国と比べると法律図書の出版自体が国家規模の割にはあまり多くない印象です。

対照的に、英国の場合は大学紀要がそこまで強くないものの*2、体系書を含む法律書籍の出版文化は盛んで、Sweet & Maxwellのような大手の学術出版社や、大学出版社の二大巨頭(OUPとCUP)を中心として、毎月のように多くの法律書籍が上梓されています。

イギリスもコモンローの国なのでアメリカと同じような感じになりそうなものですが、イギリスは判例法を中心としつつもそれを体系的にまとめようとする作業が脈々と行われてきている(ような気がする)のに対し、米国ではあまりそのような傾向はあまり感じられず、その違いにも面白さを感じています。*3

また英米に共通する点として、日本法でいうところのコンメンタールに相当するものが本当に少ない(ほとんどない)です。そもそも「コンメンタール」という言葉自体、ドイツ語のKommentar(注釈書)に由来するもので、このあたりは成文法をベースにした大陸法との違いが如実に表れてくる点と言えるかもしれません。

日本や英国での学習に慣れてきた立場からすると、体系書がほとんどない中で外国法の全容をしっかり掴むのはなかなか大変ですが、なんせこんなおしゃれな図書館ですので、蔵書も含めてしっかりこのリソースを有効活用できるレベルまで到達できればと思います。がんばります。

*1:かくいう私も実はあまり使っておらず、(1)自習だけなら家で出来る、(2)文献調査の多くはオンラインで完結する、(3)図書館で調査するときも1階の一般閲覧室で事足りる(2階に上がってくる元気がない)等々の理由で足が遠のいており、ほぼ授業前の休憩場所兼物置と化しています。

*2:法学分野だとOxford、CambridgeのLaw Journalはそこそこ存在感はあるものの、ジャーナルとしては大学紀要よりModern Law Review、European Law Journalのような専門誌の割合が圧倒的に多いです。

*3:米国は州法・州裁判所による違いがあることに加え、判例の数が膨大であり、これを体系的にまとめようとするのがそもそも難しい気もします。

カレッジ・スポーツ

米国はカレッジスポーツが盛ん(らしい)ということで、アメフトの試合を観てきました。イリノイ大学はキャンパス内にメモリアル・スタジアムという立派な競技場を持っており、アメフトの試合もそこで行われます。かなり端っこの方にあるものの、試合の日はキャンパスの至るところで全身オレンジ色の集団が一方向に向かって移動しているので、てくてくついて行って無事に到着。

 

私のアメフトの知識は中学生の頃に読んだ「アイシールド21」という漫画で完結(?)してしまっており、細かい戦術や技術的なことは全く分からないのですが、タッチダウンや良い感じのパス・ランプレーを決めるたびに回りのお客さんとワイワイ騒ぐだけでもめちゃめちゃ楽しかったです(試合も圧勝でした)。試合前やプレーの合間にはブラスバンドやチアのパフォーマンスも繰り広げられ、神宮の六大学野球を思い出しました。やっぱり大学スポーツはいいですねぇ。


www.youtube.com

 


www.youtube.com

チケットのお値段は安い座席で25ドル、普通の席(写真を撮った位置)だと50ドル~75ドルほどで、日本の大学スポーツの感覚からすると結構強気な価格設定です。普通じゃない席(写真の正面に写っている建物内の席とか)だと200ドルほどする場所もあり、しかもそれが早々に売り切れているので驚きです。それくらいカレッジスポーツは米国の大学において支持されているということなのでしょう。特にアメフトは北米4大プロスポーツ(アメフト、野球、バスケ、アイスホッケー)の中でも人気・収益ともにトップですし、アーバナ市・シャンペーン市には上記の4大スポーツのプロチームがないため、必然的にカレッジ・スポーツの人気は高まる構造にあるのかもしれません。

 

 

アメリカのカレッジ・スポーツは全米体育協会(NCAA)という組織が統括しており、各競技ごとにカンファレンスというリーグが存在します。日本の大学野球でいうところの東京六大学野球や、東都リーグのようなものに相当するようです。

面白いのはこれらのリーグは垂直・並行どちらにも広がりがあり、一部リーグ(Division1)・二部リーグ(Division2)といった垂直的な階層を持ちつつも、各階層の中に同格の複数のリーグが存在することです。

アメフトの場合、Division1には5つの有力リーグが存在し、そのうちの1つがイリノイ大学も参加しているBig Ten Conferenceというリーグになります。これくらいの有力リーグになると選手への奨学金もかなり手厚いようで、授業料や生活費がほぼカバーされる場合もあるようです。

日本の大学スポーツでも大学の宣伝効果を狙って特待生枠が用意されていることはたまにありますが、こちらのカレッジ・スポーツはそれ単体でも十分な収益性を見込めるので有望な選手に対する厚遇も可能になるということでしょう。*1

とついついお金の話になってしまいましたが、学生さんにちゃんと還元されているのは素晴らしいことだと思いますし*2、特に当地のような田舎町だと地域振興にも大きな貢献をしているので(スタジアムにはご高齢の方やご家族連れの方もたくさんきていました)、大学・地域の重要なアセットとしてのカレッジスポーツを垣間見ることができて貴重な経験になりました。

アメフトに加え、これからはバスケとアイスホッケーのシーズンも始まるようなので、カレッジスポーツを堪能したいと思います(とりあえず次のアメフトのホームゲームチケットも買ってしまいました)。

*1:今日は6万人収容できるスタジアムがざっくり6割~7割ほど埋まっていました。上記のとおり平均的な座席の値段は50ドル~75ドルなので、チケット収入だけでも1試合で2億円以上の売上を叩き出す計算になります。スタジアム内ではビールなどの飲食物の販売も(ちゃんとスタジアム価格で)行われており、チケット代に加えてこうした物販収入や広告収入もあわせるとなかなかのドル箱イベントです。

*2:プロスポーツにも匹敵すると言われている収益性と比較すると、選手や地域に対する還元が少なすぎるという批判はあるようです。